兵庫県三木市、山陽自動車道を走っていると現れる「平井山トンネル」。 何気なく通り過ぎてしまう場所ですが、実はこのトンネル、建設当時は**「国内屈指の難関現場」**として注目されていたことをご存知でしょうか?
「粘土の塊」のような山を相手に、最新技術で挑んだエンジニアたちの記録をご紹介します。

1. 「粘土のような山」という最大の試練
平井山トンネルの最大の特徴は、掘り進める対象が硬い岩盤ではなく、「未固結の砂質土」、つまり非常に脆い土の山だったことです。
- 自立性がない:掘ったそばから崩れてしまうほど地盤が弱く、まさに「粘土の塊」を掘るような困難さがありました。
- 高い含水比:土に含まれる水分量が多く、掘削面が泥濘(ぬかるみ)化しやすいという悪条件が重なっていました。
2. 国内初の挑戦「アンプレAGF工法」の採用
この「土の山」に巨大な3車線トンネルを安全に掘るため、当時としては画期的な**「アンプレAGF工法(長尺鋼管先受け工法)」**が本格的に採用されました。
- どんな工法?:トンネルを掘る前に、前方の地盤に長さ11.5mもの鋼管を30cm間隔で円状に打ち込み、地盤をあらかじめ補強しておく技術です。
- 性能の証明:かつては別の工法が主流でしたが、この平井山での成功により、AGF工法は非常に有効な手段として広く認められるようになりました。

3. 「現場の工夫」が支えた24時間の戦い
資料には、技術面だけでなく現場で働く人々の「熱意」も記録されています。
- 3交代制の宿命:トンネル工事は一度止まると崩落のリスクが高まるため、現場は24時間体制。当時の所長は「事務所が会社にとって窓口であり、ここをよくしないとイメージアップにならない」と、現場事務所の環境づくりにも心を砕いたそうです。
- 自然との共存:三木市は古くから鍛冶や酒造りで知られる土地。周辺の環境や地元の祭りへの参加など、地域との交流も大切にしながら工事が進められました。

4. そして「三木の動脈」へ
平井山トンネル(上り線:813m、下り線:802m)を含む区間は、平成7年度末(1996年初頭)の供用を目指して急ピッチで建設が進められました。
現在、山陽道が三木市の物流や観光、そして地域の発展を支えているのは、この「崩れやすい土砂山」と24時間体制で向き合い続けた人々がいたからこそと言えます。
最後に
私たちが時速100km近くでスムーズに通り抜けるトンネルの壁の向こう側には、明治のサイフォンや昭和のダム建設から続く、**「三木の土地を拓いてきた情熱」**が詰まっています。
山陽道を走る際は、平井山トンネルを通る瞬間に、ぜひこの「土砂山に挑んだ物語」を思い出してみてください。
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