【三木金物・深掘り②】ミリ単位の精度を刻む、強靭な職人魂「鑿(のみ)」

こんにちは、みきぺだるです。 三木金物の奥深い世界を紐解く連載。第1回の「鉋(かんな)」に続き、第2回は木の骨組みを形作るプロの相棒、**「鑿(のみ)」**を深掘りします。

大工さんが「コンコン」とリズムよく木を叩く音。あの音の主役こそが、この鑿です。

1. 「硬さ」と「粘り」の究極の結婚

鑿は、玄能(かなづち)で叩かれるという過酷な運命にあります。そのため、刃先には恐ろしいほどの**「硬さ」**が必要ですが、硬すぎると衝撃でポキンと折れてしまいます。

そこで活きるのが、三木伝統の鍛錬技術です。 非常に硬い「鋼(はがね)」と、衝撃を吸収する「軟鉄(なんてつ)」を極限まで薄く、均一に叩き合わせることで、**「折れず、曲がらず、よく切れる」**という矛盾をクリアした刃が生まれます。この「合わせ」の技術こそが、三木を日本一の産地へと押し上げました。

2. 三木の鑿が誇る「裏」の美学

鑿を裏返してみると、真ん中が少し凹んでいるのをご存知ですか?これを**「裏空き(うらすき)」**と呼びます。

「平らな方が使いやすいのでは?」と思われがちですが、実はこの凹みこそがプロのこだわり。

  • 研ぎやすさ: 接地面積が減るため、真っ平らに研ぎやすくなる。
  • 精度の維持: 木材に吸い付くように安定し、真っ直ぐな穴が掘れる。

この美しい曲線(裏)を削り出す工程は、まさに職人の感覚がすべて。三木の職人が作る「裏」の美しさは、世界中の木工家から芸術品と称賛されています。

3. 100種類以上の「適材適所」

一口に鑿と言っても、三木で作られる種類は驚くほど豊富です。

  • 追入(おいれ)鑿: 最も一般的な、万能選手。
  • 向待(むこうまち)鑿: 深い溝を掘るための、細く分厚い力持ち。
  • 叩き鑿: 全身が太く、大きな穴を掘るためのヘビー級。

「この作業には、この一本」と、職人の細かなニーズに応え続けてきた三木の歴史が、この種類の多さに表れています。

むすび

叩かれてもなお、鋭く、美しく。 三木の鑿は、職人の厳しい要求に応え続けてきた「信頼の結晶」です。

12月7日の「ふいご祭り」で鋼が打たれるとき、そこには数十年、数百年と使われる鑿への命が吹き込まれます。次に木工作品を見たときは、ぜひその「穴」や「溝」に注目してみてください。そこには、三木の鑿の仕事が隠れているかもしれません。

さて、次回は「引いて切る」日本独自の進化を遂げた道具、**「鋸(のこぎり)」**の世界へご案内します。 三木の鋸がなぜ「世界一」と言われるのか……その秘密をリサーチしてきます!

次回の更新も、どうぞお楽しみに!

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