三木が誇る「巨大な水がめ」呑吐ダム――難工事を乗り越えた革新的技術と名前の由来

三木市と神戸市の境に位置し、サイクリングやドライブスポットとしても親しまれている「つくはら湖」。その湖を生み出しているのが、重力式コンクリートダムの**「呑吐(どんど)ダム」**です。

今回は、その名前のインパクトに負けない、驚きの建設秘話と役割を深掘りします。

1. 「呑吐(どんど)」という名前の由来

一度聞いたら忘れられない「呑吐」という名前。これは、かつてこの場所にあった**「呑吐の滝」**に由来しています。

湖底に沈む前の呑吐の滝

川の水を勢いよく「呑んで吐く」かのような激しい滝の様子から名付けられたといわれており、現在はダムの底に眠っていますが、その名は今も巨大なダムとして受け継がれています。

2. なぜここにダムが必要だったのか?(東播用水事業)

呑吐ダムは、単なる貯水池ではありません。昭和45年から始まった**「東播用水農業水利事業」**の中核施設として建設されました。

  • 水不足の解消:慢性的な水不足に悩まされていた播州平野東部や北神戸地域の農地を潤すこと。
  • 都市への給水:三木市だけでなく、神戸市や明石市などの都市用水としても活用すること。

昭和60年度末時点で、事業全体の進捗率は約85%に達しており、地域にとってまさに「命の水」を確保するための国家プロジェクトでした。

3. 技術者たちの挑戦:日本初「ウエッジブロックジョイント」工法

資料の中で最も注目すべきは、ダムの基礎となる**「マットコンクリート」**の施工技術です。

実は、呑吐ダムが建設された場所の地質は非常に複雑で、ダム軸の直下に大きな「破砕帯(岩盤が砕けて脆くなっている層)」が通っていました。

この難局を乗り越えるため、呑吐ダムでは日本で初めて**「ウエッジブロックジョイント(くさび形ジョイント)」**を用いたマットコンクリート工法が採用されました。

  • くさび形の工夫:コンクリートを「くさび形」に組み合わせることで、万が一地盤がわずかに沈下しても、周囲の堅い岩盤に荷重を分散させ、ダム全体の安定性を保つ仕組みです。
  • 精密な解析:当時の最先端技術である「有限要素法(FEM)」を用いた計算が行われ、地震や満水時の水圧にも耐えられるよう、ミリ単位の検討が重ねられました。

この革新的な技術のおかげで、昭和61年の試験湛水を迎えることができたのです。

4. 地域のシンボルとして

ダムによって誕生した「つくはら湖(衝原湖)」の周辺には、日本最古の民家といわれる「箱木千年家」が移築・保存されるなど、歴史と自然が共存するエリアとなっています。

私たちが毎日使っている水、そして美しい田園風景。その背景には、当時の技術者たちが知恵を絞り、巨大な岩盤と向き合った努力の結晶があることを忘れてはいけません。

今度呑吐ダムを訪れた際は、ぜひその巨大な堤体の下に眠る「くさび形の基礎」と、技術者たちの情熱に思いを馳せてみてください。


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