こんにちは、みきぺだるです。 三木金物の世界を旅する連載、第3回は**「鋸(のこぎり)」**にスポットを当てます。
欧米の鋸は「押し切り(押して切る)」が主流ですが、日本の鋸は**「引き切り(引いて切る)」**。この違いが、実は驚異的な精度を生み出しているんです。

1. なぜ「引く」と綺麗に切れるのか?
「押す」動作は刃がしなりやすいため、刃を厚く作る必要があります。しかし、「引く」動作は刃がピンと張るため、刃を限界まで**「薄く」**作ることができるんです。
三木の鋸はこの特性を極限まで活かしています。刃が薄ければ薄いほど、切る際に出る木屑(切削抵抗)が減り、まるでバターにナイフを入れるような滑らかな切り心地になります。
2. 職人の神業「目立て(めたて)」
鋸の命は、ずらりと並んだ鋭い「歯」にあります。これを整えるのが**「目立て」**という工程です。
- 横挽き(よこびき): 木の繊維を断ち切るため、小さな「カミソリ」が並んでいるような構造。
- 縦挽き(たてびき): 繊維に沿って削り取るため、小さな「ノミ」が並んでいるような構造。
三木の鋸職人は、この0.1ミリ単位の歯の角度や高さを、すべて手作業や精密な機械で見極めて調整します。この「目立て」が完璧だからこそ、力を入れずともスルスルと木に吸い込まれていくのです。
3. 究極のバネ性「焼き入れ」
三木の鋸は、折れにくいのにしなやかです。その秘密は独自の**「焼き入れ」**技術にあります。
硬すぎるとポキンと折れ、柔らかすぎるとすぐに刃が鈍ってしまう。三木の職人は、鋼の温度を一瞬で見極め、絶妙な「バネ性」を持たせます。この弾力があるからこそ、長い時間使っても疲れにくく、真っ直ぐな切断が可能になるのです。
むすび
「引く」ことで真価を発揮する日本の鋸。 その中でも、三木の鋸はプロが「一生モノ」として選ぶ逸品です。
12月7日の「ふいご祭り」では、こうした鋼に命を吹き込む「火」への感謝が捧げられました。職人が一枚一枚、歯の先まで魂を込めた鋸。ホームセンターの使い捨てとは一線を画す、その「吸い付くような切れ味」をぜひ一度体験してほしいと思います。
さて、次回は雰囲気がガラリと変わります。 大工道具とはまた違う、美しき左官の世界を支える**「鏝(こて)」**をご紹介します。 「壁を塗る」という単純な動作の裏に隠された、驚きのハイテク技術とは?
次回の更新も、どうぞお楽しみに!
