「写真が教えてくれる、三木の“今”。」
フォトコンテスト入賞作品から、この街を観光とサイクリングの視点で読み解いていくシリーズ。
2枚目。
■ この一枚
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銀賞作品
「祭り日・青春」|倉本 大三郎
撮影日:2025年10月11日(土)宵宮
大宮八幡宮の境内で、平田屋台と平田青年団が祇園囃子を歌い、
自ら、そして周りの担ぎ手たちを祝福しながら、これからの担ぎに向けて鼓舞する瞬間。
■ この写真から感じたこと
写真なのに、音が聞こえてきそうな、熱が伝わってきそうな、祭りの匂いがしそうな一枚。
境内に響く太鼓のリズムと熱気。
静止しているはずの画の中に、
動きとエネルギーが詰まっている。
“青春”というタイトルがしっくりくるのも、
この一瞬にすべてを出している感じがあるからだと思う。
■ もう一歩踏み込んで見ると
この場にあるのは、単なる祭りの賑わいではない。
大宮八幡宮の境内で、
平田屋台と青年団が声を重ねる。
それは、ただのパフォーマンスではなく、
これから担ぐための“気持ちを揃える時間”。
自分たちを鼓舞し、仲間を鼓舞し、
場全体をひとつにしていく。
写真はその“直前の熱”を切り取っている。
■ 青春とは何か
この写真につけられた「青春」という言葉。
それは年齢の事を言っているようだけど、この状態のことだと思う。
何かに本気で向き合っている時間。
周りの目や評価よりも、目の前のことに熱を注いでいる瞬間。
大宮八幡宮の境内で響く祇園囃子は、
ただの伝統行事ではなく、その場にいる人たちの“今”そのもの。
声を出し、仲間と呼吸を合わせ、
これから担ぐ屋台に向けて気持ちを高めていく。
また石段を上がってきた自分たちを祝福する。
そこには完成された美しさよりも、
少し荒削りで、でもまっすぐなエネルギーがある。
だからこそ、この一枚からは“青春”を感じる。
そしてもうひとつ、この写真が教えてくれることがある。
そこには、利害がほとんど存在しない。
お金のためでも、評価のためでもない。
ただ、地元が好きで、仲間が好きで、
自分が関わっているこの時間を大切にしたいという気持ち。
とてもシンプルで、でも強い動機。
資本主義の中で日々過ごしていると、
効率や成果、数字や評価といった軸に寄っていく。
だからこそ、この一枚に映る光景は少し眩しく見える。
青春は、過去のものじゃなく、その場に立ち上がるもの。
利害ではなく、「好き」と「つながり」と「地元愛」で動く時間。
それは遠回りのようでいて、
実は人にとって大事なバランスなのかもしれない。
この写真は、その感覚を思い出させてくれる。
■ 地元愛は「つくられる」ものではなく「生まれる」もの
イベントや仕組みで“人を集める”ことはできる。
でも、“好きになる”かどうかはまた別の話。
それは、
小さな関わりの積み重ねの中で、自然と立ち上がるもの。
祭りの中にあった“青春”のように、
誰かが本気で関わっている空気に触れたとき、
その場所はただの「住宅地」から変わっていく。
これは現在三木市が取り組んでいる緑が丘ネオポリスのヒントになるのではないでしょうか。
■ 撮影の視点から見るこの一枚
この写真の面白さは、技術的なアプローチにもある。
ストロボを使うことで、被写体である人物の動きをしっかりと止めている。
表情や身体の力の入り方がブレずに写っているのは、そのためだと思う。
一方で、背景に映る平田屋台や周囲の人たちには、
わずかなブレやボケが残っている。
このコントラストが絶妙で、
被写体の存在感と、その場の“動き”の両方を同時に表現している。
ただ止めるだけでも、
ただ流すだけでもなく、
“止”と“動”を一枚の中に共存させている。
だからこそこの写真は、
静止画でありながら、強い臨場感を持っている。
そして何より、
その技術が単なる演出ではなく、
人物の熱気を切り取るために使われているのがいい。
祭りの空気、声の大きさ、身体の動き。
そういったものが、写真から伝わってくる。
■ 記録としての写真
祭りは、その年ごとに少しずつ違う。
参加する人も、声も、空気も変わる。
でも、こうして写真として残ることで、
その年の“熱量”は記録される。
特にこの一枚は、
技術や構図以上に、人の気配や感情が主役になっている。
あとから見返したとき、
「あのときの空気」が蘇る写真。
■ 観光目線で見ると
こういう祭りの瞬間に立ち会えるのは、かなり贅沢。
時間も場所も限定されているからこそ、
“見に行く”というより“出会う”に近い体験になる。
観光として整えられたイベントではなく、
地域の中で続いている本来の姿。
だからこそ、外から来た人にとっても強く印象に残る。
■ サイクリング目線で見ると
この距離感、やっぱり自転車と相性がいい。
「今日はどこ行こうか」と走って、
たまたま祭りに出くわす。
そんな偶然が起こるのが三木の面白さ。
目的地じゃなく、途中で“当たる”体験。
少し寄り道するだけで、
こういう場に入っていけるスケール感がちょうどいい。
■ 写真とライドの共通点
#01が“時間”なら、今回は“熱量”。
どちらも、その場にいないと感じられないもの。
写真は、その瞬間の熱を閉じ込める。
ライドは、その熱の中に自分が入っていく。
この違いと共通点が、
このシリーズの面白さかもしれない。
■ 現地情報
場所:大宮八幡宮(三木市)
〒673-0431 兵庫県三木市本町2丁目19−1
http://www.miki-oomiya.net/
平田屋台・平田青年団による祇園囃子
※祭礼日程は年ごとに変動あり
■ みきぺだる的に
こういう場に、自転車でふらっと入っていく。
少し離れたところに停めて、音のする方へ歩く。
気づけば、円の外側に立って見ている。
その距離感がちょうどいい。
“参加しすぎない参加”みたいな、
自転車ならではの関わり方。
■ 次回へ
次はまた違う表情へ。
熱のある風景の次は、
静けさの中にある三木を見ていきます。
